認知症介護に必要なホスピタリティマナー

介護の現場において、認知症の高齢者を介助することも多い。

認知症患者は脳の機能が低下していることから、まるで幼子のように振る舞うことがある。すると、介護士も子どもを相手にするかのように、ときに幼児語を使って利用者に接してしまう場面が見られる。

介護士としてはその場の雰囲気を和らげ、親しみを込めて介助しているつもりかもしれない。しかし、客観的に見ると利用者の尊厳を傷付けているように映るのもたしかだろう。

言うまでもなく、正常な判断力を持った高齢者は、年下の介護士には目上の者に対する接し方を望むものだ。認知症の利用者も、時々判断力が正常に戻ることがあると言われている。介護士が、相手は認知症だから幼児語で話しかけても差し支えないと思って接しているときに利用者の意識がしっかりとして、子ども扱いされていると認識することもあるのだ。

こうした状況では、高齢者が屈辱感を覚えることは想像に難しくない。介護士はこのような事態を想定して、常にホスピタリティマナーを徹底した接し方を心がけなければならない。重度の認知症の利用者に対しても、介護士は丁寧語と尊敬語を使い、礼節を守る必要がある。

介護士が利用者にかける言葉は、介護に対する姿勢の現れである。そして、丁寧語を使うことで、相手を尊重する気持ちも高まる相乗効果も期待できる。さらに、丁寧な言葉遣いだけでなく、相手が反応しなくても顔を合わせるたびにきちんと挨拶したり、理解できそうになくても介助の前に何をするかしっかりと説明するといったホスピタリティの徹底も欠かせない。